コラム・データで見るMBTI
恋人を既定値にしてたら、95%が恋人になった - 相性診断の選択肢を7つに増やして分かったこと
執筆・編集: ふたりのトリセツ編集部最終更新:
うちのアプリのデータベースを開くと、相性診断の77%が「恋人同士」と記録されてる。カップル向けサービスとしては、それらしい数字に見える。
でもこの数字、7月までは95%だった。そして、その95%の大部分は利用者が選んだものじゃなかった。
作っていたのは、コードに書いた既定値のほうだった。
「ふたりのトリセツ」はMBTI(16タイプの性格診断)とラブタイプを組み合わせて、二人の相性を診断するWebサービス。本業はAIエンジニアで、これは個人開発。今回は、入力画面に選択肢を1列足しただけで、データの見え方が変わった話を書く。
95%が恋人だったのは、選択肢が無かったから
2026年7月まで、うちの入力画面には「ふたりの関係」を選ぶ場所が無かった。名前とタイプを入れて診断ボタンを押すと、関係性はコードに書かれた既定値、つまり「恋人」としてデータベースに記録される。カップル向けに作ったサービスだから、当時は疑問も持たなかった。
7月の実測がこれ。
| 関係性 | 2026年7月の診断数 | 割合 |
|---|---|---|
| 恋人 | 6,234 | 94.8% |
| その他 | 297 | 4.5% |
| 友達 | 41 | 0.6% |
| 夫婦 | 4 | 0.1% |
| 同僚 | 0 | 0% |
| 初対面 | 0 | 0% |
94.8%が恋人。 友達は41件、同僚と初対面はゼロ。この41件は、結果ページの一部の入り口など、例外的な経路から入った分だけだった。
7月末にこの数字を集計していて、引っかかった。「95%が恋人」は利用者の実態なのか、それとも選択肢が無いだけなのか。コードを確認したら、答えは後者だった。関係性のカラムに入っている値は、ほとんどが誰にも選ばれていなかった。既定値がそのまま流れ込んでいた。
選択肢を7つに増やしたら、1か月でこうなった
7月31日、入力画面に「ふたりの関係」を選ぶチップを追加した。恋人・夫婦・友達・家族・同僚・初対面・その他の7択。既定は恋人のままで、タップひとつで切り替えられる。
8月(23日まで)の実測がこれ。
| 関係性 | 2026年8月の診断数 | 割合 | 7月 |
|---|---|---|---|
| 恋人 | 5,785 | 64.5% | 6,234 |
| 友達 | 1,375 | 15.3% | 41 |
| その他 | 1,179 | 13.2% | 297 |
| 夫婦 | 250 | 2.8% | 4 |
| 同僚 | 211 | 2.4% | 0 |
| 初対面 | 163 | 1.8% | 0 |
友達が41件から1,375件。1か月足らずで33倍になった。ゼロだった同僚は211件、初対面は163件。恋人の割合は94.8%から64.5%まで下がった。
利用者の好みが1か月で変わったわけじゃない。友達と診断したい人は、7月もその前も、ずっと来ていた。選択肢が無かったから、まとめて「恋人」として記録されていただけだった。
※集計は本番データベースの匿名ログ(guest_activity_logs)から。8月分の表は家族(family)の月次値が集計スクリプトの表示に含まれないため、分母がごくわずかに小さい。全期間の家族は111件(0.7%)で、順位や割合が変わるような数ではない。
友達との相性を測りに来てた人は、ずっといた
検索から「MBTI 相性」で来る人の中に、恋人ではなく友達との相性を調べたい人がどれくらいいるか。選択肢を置くまで、それを知る方法が無かった。
置いてみたら、8月の診断の15.3%が友達になった。しかもこの割合は年代で変わる。8月から任意で聞き始めた年代データでは、17歳以下は友達との診断の割合が43.6%で、全体(28.8%)よりはっきり高い。恋人との診断はむしろ全体より低い。この年代の話は答えてくれた人の7割が、24歳以下だったで別に書いた。
9月は新学期で、友達まわりが動く時期でもある。友達との相性の見方は友達同士のMBTI相性にまとめてあるので、興味があればそっちも。
正直に書いておくべきこと
この記事の数字には、書いておかないとフェアじゃない限界がいくつかある。
- 8月の64.5%もまだ真の値じゃない。 既定は今も「恋人」のままなので、恋人のまま進めた人の中には「選んだ人」と「そのまま流した人」が混ざっている。恋人は実態より多めに出る方向のバイアスが残っている
- 逆向きのバイアスもある。 既定と違う関係の人ほど選び直す動機が強いので、「選んだ人だけ」を分母にすると今度は友達が多めに出る。つまり真の友達率は、この設計では確定できない
- 全期間の集計(恋人77.1%)は意味がない。 7月以前と8月以降で「恋人」というデータの意味が違うから。期間で意味が変わった数字を混ぜて平均すると、どちらの期間の説明にもならない
あと、これは頻度の数字であって、相性の良し悪しとは関係ない。友達での診断が33倍になったことと、友達との相性が良いかどうかは、まったく別。
既定値はデータを作る、という話
開発者として学んだのは、UIの1行がデータベースの9割を決めていた、ということ。
「うちの利用者は95%がカップル」と、7月までなら言えてしまった。データベースに実際にそう記録されているんだから、嘘ではない。でも実態でもなかった。数字は測った結果じゃなくて、設計の結果だった。
自分のサービスのデータを眺めるとき、いちばん先に疑うべきは「この数字は誰が作ったのか」なんだと思う。利用者が選んだ値と、開発者が決めた既定値は、同じカラムに並んでいて見分けがつかない。コードを読まないと区別できない。
おわりに
選択肢を1列足しただけで、同僚と診断する人が211人、初対面の人と診断する人が163人、突然「出現」した。もちろん出現したんじゃなくて、最初からいた。見えるようになっただけだと思う。
診断はここからできる。関係性は7つから選べるようになったので、恋人じゃなくても、そのままどうぞ。
出典・関連記事
集計対象: 「ふたりのトリセツ」本番データベースの匿名診断ログ 15,904件(2026年1月24日〜8月23日)。特定の個人を識別する情報は使っていない。関係性別の内訳・月次推移は読み取り専用の集計スクリプトの出力をそのまま使い、数値は執筆時点(2026年8月23日)で固定している。
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この記事のよくある質問
友達同士でも相性診断できるの?
できます。入力画面で「ふたりの関係」を恋人・夫婦・友達・家族・同僚・初対面・その他の7つから選べて、選んだ関係性に合わせた内容で診断が出ます。友達同士の相性の見方は友達向けの解説ページにもまとめています。
実際のところ、友達同士で使ってる人はどれくらい?
正確には分かりません。2026年8月の診断の実測では、15.3%が友達でした。ただし既定値が恋人のままなので、恋人側は多めに出ます。逆に、既定と違う人ほど選び直すので、友達側も多めに出ます。両方のバイアスが同時にかかっているので、記事の中でも限界として書いています。
このデータはどこから取ったの?
「ふたりのトリセツ」の本番データベースに記録された匿名の診断ログ15,904件(2026年1月〜8月23日)の集計です。特定の個人を識別する情報は使っていません。年代別の傾向は、2026年8月2日から任意で収集している年代入力の集計です。
友達での診断が33倍になったのは、友達との相性が注目されてるから?
違います。この記事で書いたとおり、増えたのは「友達と診断したい人」ではなく「友達と記録される診断」です。選択肢が無かった期間はほとんどが恋人として記録されていたので、実際の利用のされ方は7月以前から大きく変わっていない可能性が高いです。
